「思い込み」は仕事に必要

経過

    ある日、送迎担当者が数日前に確認した3人のみの送迎をして、その後追加されていた2人を送迎するのを忘れてしまったことがあった。
    当日掲示してあった名簿には、5人の名前が印字されていて、しかも当日は送迎担当者はその表を見て確認していた。「追加」の対象者は、二三日前に追加されたとのことである。
    別の職員によれば、前日の段階で、送迎対象者についての口頭のやりとのの中では、「追加」対象の人数はなかったとのことである。(つまり、「明日は3人の送迎です」---本当は5人なのに---という発言があった。)

    すなわち、送迎は3人という「思い込み」があったので、5人の名前がある表を見ても、頭の中では「3人」という「思い」だけが増強されてしまっていたのである。このように、「思い込み」があると新たな情報を、通常の形式で与えられても反応しないことはよくあることである。

思い込み……作業手順の「構想」

    一般に手順についての「思い込み」とは「段取り」「構想」であって、業務の段取りを「思い込む」ことによって業務はスムーズに流れるのであるから、「思い込む」こと自体は必要であり、非難や防止は不可能である。
    つまり「しっかり確認する(しなさい)」「気をつける(なさい)」は無意味ではないが、必ずしも有効ではないのである。
    問題は、そのいったん構築された「構想」が無点検のまま実行されるとき、ある場合には「見落とし」などの過誤として結果することであるから、一定の時限において、「確認」することが必要である。

思い込みによる見落としをなくすために

    こうした「見落とし」をゼロにするには、事前の情報をゼロにすることであるが、これは現実的ではない。
    あらかじめ形成された「構想」による意識の流れに第三者(人でもモノでも)がチェックを入れる仕組みを作ることで、見落としは少なくなる。この事例の場合、日程の表を見落としにくい表示に変えるというのも有効である。
    さらに、事前にそのチェックを経ないと実施できない・事後にチェックを経ないと終了できない、という仕組みや手順を構築することも有効である。すなわち、

  • カード形式にして「着手」と「終了」においてカードの置き場所を違うところにするとか、
  • リスト形式なら、済んだ案件は必ず消すとか、
  • 複数で声に出して仕事量や目標、時間などを確認するとか
  • 作業終了時に復命することで何かが完了するとか、
  • キーなどを別の者から受け取るようにして、そこで作業内容が再確認されるとか。


    今回は、送迎担当者の席の後ろの壁に掲示している対象者表のすぐ横に赤ペンを配備し、当日事前・事後に赤ペンを用いてチェックすることにした。
    担当者は毎日当該の表を見て業務しており、その表を見た時の視野の中にインク切れのありえない筆記用具(クーピーペンシルのようなやつ)を配備したので、「一般的な確認の強調」や「単なる確認回数の増加」よりも具体的かつ有効であると信じる。


    当面はこの手順で経過を看ることを提案する。